Saturday, October 30, 2010

ラテンアメリカ中級 45A : 陸路メヒコ出国


ラテンアメリカ 中級 45A : 陸路メヒコ出国
 <ティファナ編>


ワタシかなりお気に入り、メヒコ。その文化と人々。もーメヒコのカルチャー、人々、飯、飲み物、匂い、カラフルな色、彼ら独特の仕草に会話のペース・・・。とにかくメヒカーノ達とメヒコ料理を食って、メヒコドリンク飲んで、メヒコ音楽で踊って、メヒカーノ達と遊んでるときはリアル異文化交流でかなり楽しく学んだね。で、合計で 2 年弱ほどメヒコに滞在してたんだけど、そのうち 2 回ほどメヒコから陸路でアメリカに戻ったことあるんだけど、その 2 回両方とも簡単じゃなかった。

今回は、お話なのでワタシ普段話すみたいに書くね。


パッシング国境

最初に陸路でメヒコ出国したのは、2001 年。当時カリフォルニアのエルエーに住んでてやっとローカル友達が出来た頃で、一番仲良くなったのが、ロン。彼はメヒカーノ。生まれも育ちもメヒコ。15 才の時にお父さんのいるエルエーに引っ越してきた。他にハーフメヒカーノにハーフ何か他の人種、な友達とかも出来て、10 人ぐらいのグループでよくハングアウトしてたけど、アジア人は俺とマットだけ。

ハングアウトしてたエリアは大体、近所のハイランドパークっていうフッド。ちなみに、カリフォルニアは 19 世紀までメヒコ領だったし、エルエーでも基本的に観光地じゃない限りどこへ行ってもメヒカーノを見かけた。

はい、でマーシャっていうロンの妹と彼女の友達ともよく一緒になってハングアウトしてたんだけど、彼らの卒業タイミングでみんなでメヒコへ行こうと、軽いノリで決まって。じゃあ、どこ行こうかと。すると、これまたハーフメヒカーノのソニーって友達のお父さんがローサリートの近くに貸別荘持ってるし、ローサリートにはカリフォルニアキッズのスプリングブレイクでおなじみスポット Papas & Beer あるし、って。じゃあそこ行こうってなって。

ボーダーからすぐだし、みんな気軽に行こう、と。で、マーシャが「ピクチャー ID 忘れないでね。帰りに必要になるから」と。はい、俺ちゃんと持っていきましたよ、カリフォルニア州ドライバーズライセンス。

で、俺のホンダ・シビックとティファニーっていうブロンドガールのフォード・マスタングと 2 台に 4 人ずつ乗って行った、ローサリート。

で、 2 泊か 3 泊ほど食って飲んで踊って、エンジョイしたからじゃあ帰ろうか、って。まあ普通にまた 2 台に分かれて乗って、来た道を戻って。で、来ました アメリカとメヒコのボーダータウン、ティファナ。Manu Chao のあの有名な歌 welcome to Tijuana, tequila, sexo, marijuana. のティファナ。実はココ、行きはスイスイとノーチェックでパスできたのに、帰りはチョー渋滞。


Border Line San Ysidro-Tijuana

photograph taken from flickr, courtesy by saxxon57


ルールはルール

あらー、なんて現実。アメリカからメヒコに入国はイージーなのに、メヒコからアメリカ入国はかなりトラフィックジャム、まじで。しゃあないな、とノロノロと順番待ち。で、やっと俺らの番が来た。もちろん、ボーダーパトロール達の表情はシリアス。ジョークとか、スマイルどころでもない。

はいー、で俺ドライバー。「こんちわーオフィサー、調子はドウすか?」なんて慣れた感じの英語でカジュアルにコミュニケーション。彼は、はいはいと事務的に車ん中の全員の ID をチェック。「へー、アメリカとメヒコの関係は素晴らしいな、ID だけで国境スルー出来るんだー」なんて言ってるところへ「ヘイ、ユー」とオフィサー。

「お前、パスポートはドコだ?」と、更にシリアスな顔つき。
「持ってないよ。」
「じゃあアメリカ入国できない。今すぐ車を降りろ。」
「・・・はい?どうゆう意味?」
「お前は外人だろ。パスポート持ってなければアメリカには入れない。」
「いやいや、観光客じゃないよ。エルエーに住んでるよ。いま ID 見せたところでしょ。」
「彼らはアメリカ人だ。 ID だけでいい。おまえは、外人だ。パスポートがいる。」
「・・・マジで?ジョークでしょ?」
「シリアスだ。早く降りろ。」
「何言ってんの、オフィサー。みんなと一緒だよ。だから大丈夫。行かせてよ。」
「Hey, I'm not joking. 」
「・・・」

いやー、もーここら辺からテンパってきて、どーしよか、と。俺の車だし、俺だけ・・・ どうなるの?ドコ連れてかれるの?いや、マジで?なんか笑えてきた、その状況に。

とにかく、パスポートがないことにはラチが開かないのはすぐに理解したから、じゃあパスポートが必要。で、ロンに俺のアパートのキーを渡して、パスポートの置き場所を教えて、ボーダーからエルエーの往復運転をお願いして。オフィサーにもその状況を説明して、とにかくケアレスミスだった、と。

「じゃあ、俺は待ってるから、ここで。」って、一人車を降りて、俺の車なのに。ロンは半分笑いながら「じゃあ、ゆっくりしときな。スグ戻ってくるからな」と、彼のガールフレンドのメリッサともう一人乗せて俺の車で国境パスしてって。


国境警備最前線

一人残された俺は、付き添いの他のオフィサーに案内されるがまま建物の方向に歩かされて。「まあ、キミは不法入国しようとした訳じゃないから、ノーウォーリーだ。とにかく友達が君のパスポートを持って戻ってくるまで、ここで待ちなさい。」と案内されたのは殺伐とした部屋、というかオフィスの一角。

隣に座ってる若いイカニモって感じの男は「俺は何も悪くねえんだ、分かるだろ、メーン」と俺に同調を求めるけど、彼がなんでそこにいるのか知らないし。なんか言ってたけど、忘れた。彼女がどうのこうの言ってたな。

とにかく一つのベンチにあれだけ長い間ずーっと座ってたのも、あの時だけと思う。かなり長かった。

で、その部屋、ときどき人が連れてこられるんだけど、それが、まーリアルにボーダーパトロールの仕事っぷりを見せてくれた。連れてこられるのは大体メヒカーノ達。しかも決まって後ろ手に縛られた状態で。そんな連中がロープで数珠つなぎにされてて、みんなバツの悪そうな顔してた。基本的にハッピーな状況じゃないから、みんな俺と目があった時のあのフテってるバイブスはハンパなかった。彼らは俺らがいた部屋にステイせず、どこか別の部屋へ連れて行かれてた。国境警備最前線。

「あいつらペーパー持ってねえんだ。いるんだよなー、ペーパーが。分かるか、メーン。」とあの男。
「ああ、俺はパスポートだな、持ってなかったのは。」
「お前何人だ?」
「ジャパニーズだ。」
「ついてねえな。」
「間違いない。友達はみんなパスしたけどな ID だけで。」
「じゃあお前も次はパスだな」
「だな。」

なんかこんな感じで会話した記憶がある。で、あー俺ギリセーフだったんだ、と。


時間差

とにかく、ロンが俺のパスポート持ってボーダーまで戻ってきたころには日も暮れ、腹もかなり減ってた。 7 時間オーバー待ったか。あー、マジ疲れた。ありがとう、ロン。こんな時間まで、と。・・・あれ?ティファナとエルエー、急いで往復したら、6 時間ぐらいじゃない?ロンに聞いてみた。

「マジでありがとうな。かなり時間かかったもんな。パスポート見つけるの大変だったっしょ?」
「いや、すぐ見つかったぜ。」
「あ、そう。じゃあ、安全運転してきたんだ。ちょっと時間かかったもんな。」
「いやー、ノーチ、日本車はやっぱいいな。燃費良いし、室内が広い。」
「・・・何の話してんの?」
「いやー、ノーチ、ちょっと路肩に止めてな。」
「路肩?ハイウェイで?そうか、運転疲れて。」
「メリッサがなあまりにも可愛くてな。」
「・・・ん?」
「シート倒したら、シビックかなり広いぜ。もうそりゃ bang! bang! だぜ!」
「what ju say, Ron?」
「Nochi, I chaka-chakaed in the car.」
「what the... 」
「Haha-, I'm a man, Nochi!」

メリッサもメリッサで、「本当よノーチ、ちょっとだけね。」とか、あんまり照れた様子でも悪びれてる訳でもなく。で、ロンは「俺は男だぜ」と、満足気で自信マンマン。二人ともなんかスッキリした顔つきしてて、まあ、メヒカーノは情熱的ね、ってことか。

俺も俺で、もとはマーシャが ID だけでいいと言ったものの、外人であることを忘れて、国境越えるのにパスポートを持ってなかった自分のバカさもあったし、ワザワザ二度手間してくれたロンへの感謝の気持ちもあったし、あんまチャカチャカの件は気にならなかった。彼も「大丈夫、こぼしてない」って言ってたし。

とにかく、どこにいようと国境を越えるときはパスポートは最重要。